
ワインの世界地図~フランス・ボルドー地方~

ワインの世界地図、今回はフランス・ボルドー地方をお届けします。
ボルドー地方はフランス南西部に位置し、世界を代表する銘醸地として知られています。
フルボディの高級赤ワインを生産するエリアは殆どがボルドースタイルの影響を受けているといっても過言ではないでしょう。そして「ボルドーレッド」という色の表現が世間に浸透してるように、赤ワインの銘醸地として世界に名を轟かせています。
ボルドーワインの変遷
今の20代の若い世代はそうでもないと思いますが、私と同じ30代からそのまた上の世代のワイン学習者の入り口は必ずボルドーでした。
ですので今の日本でワインに携わる業界人の故郷的な産地なのではないでしょうか。
ボルドーは紀元1世紀のころからブドウ栽培が行われたという推測がされていたが、日の目を浴びたのは中世以降とされています。
現在のボルドーにあたるアキテーヌ地方を所有していた女性領主が
1152年にノルマンディー公と結婚、そしてこのノルマンディー公が1154年にイングランド王であるヘンリー2世となったためボルドーは英国の領地になったのです。
その為ボルドーワインは英国で販売、消費され一挙に繁栄期を迎えました。
この名残もあるのか、今日でもフランスワインの最大のマーケットは英国であり、世界の様々なワインジャーナリズムや教育機関も英国ベースであることが多いのです。
シャトーと格付け
この地域では「シャトー」と呼ばれる建物が最大の特徴とされています。
直訳すると「城」という意味なのですが、決してすべてが豪華な城なのではなく、
そのシャトーを醸造設備の本部として、その周辺の所有するブドウ畑でブドウを栽培し、シャトー内の醸造施設で醸造し瓶詰めするという施設全体を指します。
シャトー=ボルドーにおけるワイナリーの名称と思って頂いても結構です。
ボルドーでは1855年のパリ万国博覧会の際に国を代表するアルコール飲料であるワインを格付けするという政策が採用され、ボルドー地方のメドック地区内での61のシャトーが当時の1樽辺りの価格別で等級分けされ1級から5級に格付けがされました。
このメドック格付けは今日でも色濃く影響が残っています。
フランスワインのAOC制度
フランスではAOC制度という原料が由来する産地を保護する制度が導入されており、日本でいう「明石の鯛」という産地と原料の繋がりを国が保証しています。
我が国では琉球泡盛、球磨焼酎などが法律により認定されています。
ボルドー地方ではAOCボルドーと呼ばれるボルドー全域でのブドウを集めたワインの呼称の他にもっと細かい水準をクリアした、
AOCメドック(地区名)
AOCポイヤック(村名)などの分類がなされ
その最たるものが「シャトー●●」なのです。
これはボルドーの○○地域の○○村の●●というシャトーの畑のブドウから造ったワインという最も原料ブドウの由来が保証されたものであるのです。
ボルドーのブレンド技術
ボルドー地方は黒ブドウはカベルソーヴィニヨン、メルロー、カベルネフラン、プティヴェルド、マルベック、白ブドウはセミヨン、ソーヴィニヨンブラン、ミュスカデル、ソーヴィニヨングリといったブドウをブレンドして作るのが特徴です。
なぜかというとシャトーの品質やスタイルに一貫性を持たせるために様々な特徴のブドウをブレンドすることでそのシャトーのキャラクターを画一化させるためです。
個人的にはボルドーワインの魅力は「ブレンドの妙味」であると思います。
単一では一長一短あるブドウ品種をその年のブドウの出来を考慮したうえでブレンドを行うことにより、ワイナリーの味わいの方向性を統一させるという行為は尊敬に値します。
そしてボルドーワインはブレンドを行う事によりさまざまな複雑な香りと味わいの要素を持ちあわせます。
カベルネソーヴィニヨンは黒系ベリー、ハーブ、西洋杉の清涼感、樽によるヴァニラ、
メルローはジューシーさを伴ったコシと丸みと共に飲み頃に早くリーチします。
カベルネフランは軽やかな優雅さとハーバルさ、プティヴェルドは腰回りの安定感とリッチさを与えます。
このブレンドによってボルドーワインは若いながらも様々な香りと味わいの要素を持っているのでテイスティング初心者にとっては「香りの宝庫」ではないでしょうか?
ボルドーワインの多様性
ボルドーでは世界的名声を誇る赤ワイン以外にも軽快で時には樽熟成により複雑味を持つ白ワインや「クレレ」と呼ばれる黒ブドウをベースにした濃い色調のロゼワイン、
そして世界に誇る貴腐ワインと呼ばれる甘口ワインを生産しています。
世界的に低アルコール化や料理の仕立てが軽くなってゆく一方で古典的とみなされている
ボルドーワインは過去のものかと思われるかもしれませんが、表題で述べた通り我々日本人のワイン学習者にとっては故郷のような存在です。
まとめ

ボルドーワインは和食やジャズ音楽のようなもので年を重ねてゆくほどにその良さが理解できるように思えます。温故知新といったところでしょうか。
若いうちはフルボディで力強い味わいが時を越えて味わいが統合してゆく過程は世界中ほかの産地のワインを味わっても、ボルドーのそれは本当に素晴らしいです。
メジャーですが突き詰めれば奥の深いボルドーワイン。
ワインに興味がおありの方は必ずトライしてほしい産地だと言えます。
Sommelier’s Note
記事作成者
朝倉達也について

A.S.I.(国際ソムリエ協会) 認定ソムリエ / J.S.A.(日本ソムリエ協会) 認定ソムリエ・エクセレンス / Court of Master Sommeliers 認定ソムリエ / Napa Valley Wine Japan Expert / WSET Level 3 / 2022年、ソムリエの新しい働き方を広げてゆくべく独立、株式会社La Luneを設立。関西中心にフリーランスとして活動を開始。従来の概念にとらわれずもっと自由な料理とワインのペアリングをみなさまに楽しんで頂くために、独自のメソッドや方法論を日々試行錯誤している。