ワインの世界地図~フランス・シャンパーニュ~
今回のワインの世界地図のテーマは日本人が特に大好きなエリア、シャンパーニュです。
パリから高速鉄道にて1時間半でアクセスでき、フランスワインの銘醸産地の中では最もアクセスし易い産地です。
シャンパーニュ地方は宗教にも深く関係がありフランスの歴史を語る上でも欠かすことのできない産地でもあります。
では、この魅力ある産地の歴史や様々なトピックを一緒に見てゆきましょう!
歴史
今日のシャンパーニュ地方が誕生したのは紀元前57年のローマ帝国のユリウス・カエサルによる後にガリア戦記と呼ばれる征服によるものでした。
シャンパーニュ地方はそれまでは多民族によって構成されたガリア王国の一部であり、その首都であった所が現在のランスにあたる場所になります。
年表
紀元前シャンパーニュ地方が誕生 紀元前57年のローマ帝国のユリウス・カエサルによる後にガリア戦記と呼ばれる征服によるものでした。
ローマ人がブドウを植え始めたのは451年のフン族との戦いとの後とされていますが、それ以前からすでにワインを飲んでいた形跡はあったそうです。
メロウィング朝を築いたクロヴィス卿はフランク王国クロヴィス1世としてランスで戴冠式を行い、これ以後国王の戴冠式はランスで行われるという習慣となりました。
シャンパーニュ地方においてもワイン造りには修道院の存在が欠かせません。650年には後にシャンパーニュ製法を発見するドンペリニヨンが所属していたオーヴィレール修道院が建設されました。
ランスの大聖堂が着工、1088年にはシャンパーニュ地方出身のウルバヌス2世がローマ教皇となりこの地の名声は更に大きくなりました。
ランス大聖堂のゴシック様式部分の着工が始まり、この時点においてシャンパーニュ地方のワインの品質は国内外から非常に高い評価を集めていました。
勿論、この時点では発泡するワインの発明はなされてなく、非発泡性のワインの品質が高かったという意味合いになるので産地としてのポテンシャルは早い時期から評価されていたと言えるでしょう。
ブルボン朝初代国王アンリ4世はシャンパーニュの赤ワインを好んで飲んでいたとされます。
1639年に生まれたドンペリニヨン僧は1658年にオーヴィレール修道院の酒庫番となりました。彼は盲目だったと言われており、それと引き換えに類まれな味覚を持ち合わせ、様々な畑のブレンドをすることでワインの品質が向上するということに気付いたそうです。
そして糖分が残ったブドウジュースが寒い冬に一度発酵を停止し、暖かい春に再度発酵を始めるとワインに気泡が発生するということを発見しました。これがシャンパーニュの始まりといわれております。1680年頃の出来事とされています。
ルイ15世によりワインの瓶詰輸送許可がされ、シャンパーニュは世界中で愛される存在となったのです。
「シャンパーニュの丘陵、メゾンとカーヴ」がユネスコ世界遺産に認定されるにまで至りました。
今では誰しもが認めるハレの日の飲み物として世界中で認知されています。
唯一無二のスタイル
シャンパーニュで生産される発泡性ワインは「シャンパーニュ方式」や「伝統的瓶内二次発酵方式」と呼ばれる製法で生産されています。
他の地域で同じ製法で発泡性ワインを生産しても「瓶内二次発酵」とは記せますが「シャンパーニュ」と記すことはできません。
シャンパーニュは華やかで軽快なイメージがありますが、意外にも黒ブドウが主な原料となっています。
シャンパーニュには7種類のブドウ品種の使用が許可されていますが、
ブドウ品種
■ピノ・ノワール
■ムニエ
■シャルドネ
の3種類が栽培の99.7%を占めています。
シャンパーニュの味わいの神髄はブレンドにあると言われており、各シャンパーニュメゾンは様々なベースワインをブレンドして自らのメゾンの味わいを表現しています。
製法としてはベースワインをブレンドした液体に酵母と蔗糖を瓶詰めし瓶内で一次発酵を行います。
その後ワインは瓶の中で発酵を始め、アルコール発酵により生成された二酸化炭素は逃げ場を失い、液体に溶け込みます。これがシャンパーニュの細かく繊細な泡立ちが生まれるプロセスなのです。
その後、澱(おり)と呼ばれる酵母の死骸を瓶口に集めて除去する作業を行い、最低15カ月の
熟成を行ったのち出荷がなされます。
(製法についてはもっと詳しく書くとキリがないので、製法の回で細かく説明します。)
ポイント
ブレンドをすること、瓶内で長期間の熟成を行う事で細かい繊細な泡立ちや複雑な味が生まれること、このふたつを押さえてさえ頂ければ大丈夫です。
エリア区分
それではシャンパーニュの生産地区を見ていきましょう。
モンターニュ・ド・ランス地区
直訳すると「ランスの山」となりなだらかな丘陵地帯となります。
ピノ・ノワールの栽培比率が多く斜面の向きにより酸が強い区画、フルボディになる区画などが分かれます。
ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区
「マルヌ渓谷」という意味合いでマルヌ川沿いに広がる産地です。
粘土質土壌が多く、川に近いため霧の影響を多く受けることから、丈夫なムニエ種が多く植えられています。
コート・デ・ブラン地区
中心都市のひとつエペルネの南に広がるエリア、「白い丘」の名の通りシャンパーニュ地方の象徴でもある石灰質土壌を多く有するエリアです。
石灰質土壌と相性の良いシャルドネが多く植えられており、高級銘柄が多く生産されるエリアでもあります。
コート・ド・セザンヌ地区
コート・ド・セザンヌ地区はコート・デ・ブラン地区より南西15キロほどに位置するエリアです。比較的温暖なエリアでもあり知名度もそこまで高くないという点で、味わいや価格として親しみやすい銘柄が多いような印象のエリアです。
コート・デ・バール地区
上の4つの地区はマルヌ県に属しますがコート・デ・バール地区は更に南のオーブ県に位置します。
地理的にはシャブリやサンセールに近く、土壌もジュラ紀のキンメリジャン土壌が多く独特のミネラルを有する味わいのシャンパーニュが生産されています。ビオディナミ栽培を行っている生産者が多いのも特徴と言えます。
品質
シャンパーニュには以下の独自の品質分類があります。
- ノンヴィンテージ・シャンパーニュ
最も世間で出回っている銘柄で複数ヴィンテージのブレンドをしたそのシャンパーニュメゾンを最も分かりやすく表現した銘柄。
- ヴィンテージ・シャンパーニュ
非常にブドウの出来が良かった年にのみ造られる銘柄。全てのメゾンが造るわけではなく各メゾンの判断により製造される。
- ブラン・ド・ノワール
「黒の白」という意味。黒ブドウのみを原料としたシャンパーニュの通称。比較的色合いが濃く、味わいもフルボディになる傾向が多い。
- ブラン・ド・ブラン
「白の白」という意味。白ブドウのみを原料としたシャンパーニュの通称。スモーキーでミネラル感が強く骨太な骨格の味わいのものが多い。
- プレステージ・シャンパーニュ
モエシャンドン社のドンペリニヨンやアンリオ社のキュヴェ・エメラといったそのメゾンを代表する最高級銘柄。ヴィンテージも記載されている。
多くはメゾン内で熟成をさせ、飲み頃に達してからリリースされることが多い。
業態分類
シャンパーニュには以下のような生産者の業態分類があります。ラベルに必ず記載されているので是非チェックしてみてください。
NM(ネゴシアン・マニピュラン)
自社畑を持ちながらも原料(ブドウ、果汁、ベースワイン)の買い取りをしつつ醸造も行い、自社ブランドとして販売する。ほとんどの大手がこれに属する。
RM(レコルタン・マニピュラン)
ブドウ栽培者でありつつも醸造も行い自社ブランドとして販売している業態。
CM(コーペラティヴ・ド・マニピュラン)
生産者協同組合。組合員が栽培したブドウでワイン造りをし、組合ブランドとして販売を行う。
RC(レコルタン・コーペラトゥール)
ブドウ栽培者と共同組合を兼ねた業態。
SR(ソシエテ・ド・レコルタン)
ブドウ栽培者の団体。同じ団体の畑で作られたブドウでシャンパーニュを造る。
ND(ネゴシアン・ディストゥリビュトゥール)
瓶詰めされた完成品を購入し自社ブランドとして売るディストリビューター。
MA(マルク・ダシュトゥール)
顧客の要請により造られるプライベートブランド。
R(レコルタン)
上記に当てはまらない農家が自身の畑で収穫したブドウをネゴシアンに醸造委託して造る業態。
まとめ~お気に入りの銘柄を~
シャンパーニュの魅力はやはり華やかさであると言えます。
他のスパークリングワインと異なり「お祝いの日にはシャンパーニュを」、という習慣はヨーロッパでも日本でも変わりはありません。
殆どは辛口の味わいであり繊細な泡立ちは食事中の口内をリフレッシュさせる意味合いもあるので食前酒から食中酒までも幅広い活躍を見せるのも魅力のひとつです。
更には多種多様なシャンパンメゾンがあるので、お気に入りの銘柄を探せるというのも魅力のひとつではないでしょうか?
贈り物としても喜ばれるシャンパーニュ、是非お気に入りの銘柄を探してみて更なる魅力を見つけてみてはいかがでしょうか?
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
Sommelier’s Note
記事作成者
朝倉達也について
A.S.I.(国際ソムリエ協会) 認定ソムリエ / J.S.A.(日本ソムリエ協会) 認定ソムリエ・エクセレンス / Court of Master Sommeliers 認定ソムリエ / Napa Valley Wine Japan Expert / WSET Level 3 / 2022年、ソムリエの新しい働き方を広げてゆくべく独立、株式会社La Luneを設立。関西中心にフリーランスとして活動を開始。従来の概念にとらわれずもっと自由な料理とワインのペアリングをみなさまに楽しんで頂くために、独自のメソッドや方法論を日々試行錯誤している。