
ブドウ品種を知る ~リースリング~

ワインはブドウから造られた飲み物であり、主役は言わずともブドウです。
ブドウの事をより知って頂くことでよりワインに対しての愛着が持てることでしょう。
「ブドウ品種を知る」の回では世界で栽培されている様々なワイン用ブドウをメジャーなものからマイナーなものまで色々紹介していこうと思います。
高貴品種「リースリング」
今回のブドウはリースリング。
シャルドネと並ぶ白ワイン用ブドウの2大高貴品種と呼ばれています。
その特徴は「ピアノ線」と言っても過言ではない芯の通った酸があるという点です。
酸の性格は産地によって違えども、この美しい酸味と弾けるような果実味がこの品種の特徴です。
また、「ぺトロール香」とも呼ばれるガソリンのような香りがあるのも特徴で他の品種にはない独特の性格だと言えるでしょう。
味わいは辛口から極甘口まで生産が可能でドイツの極甘口は100年以上の熟成に耐えうる銘柄もあります。
いずれにせよ、酸度と糖度のバランスがこの品種を味わううえでの大事なキーポイントになるでしょう。
ピュアさや繊細さを大切にしたいブドウ品種なので一般的にオーク樽を用いることはあまりありません。
シャルドネとは異なり、栽培可能な場所を選ぶ傾向にありますがどの産地も非常に魅力的な味わいのリースリングを生産しています。
それでは、代表的な産地を見てゆきましょう。
代表的な産地
■フランス/アルザス地方
■ドイツ全域
■オーストリア全域
■オーストラリア/イーデン・ヴァレー地区
■その他/東欧諸国
フランス/アルザス地方
フランスにおけるリースリングの最も重要な産地はアルザス地方です。
ドイツとの国境にあたるこのエリアは戦争により何度も統治が入れ替わったことによりドイツとフランス、2つの言語や文化を持ったエリアとなりました。
アルザスにおけるリースリングは最も重要かつ高貴なブドウ品種であり、ゲヴュルツトラミネール、ピノグリ、ミュスカと共に単一でのラベル表記が認められます。
基本的には香り高く繊細な辛口にはなりますが、隣国のドイツと比べるとボディは強くアルコール度数も高くなる傾向となります。
ごく一部ではありますが、遅摘みや貴腐菌の付いたブドウから甘口に仕立てられる事もあり、特に貴腐菌のついた極甘口は数十年の熟成が可能な銘柄もあります。
まずはこの品種の典型的な味わいを知るうえで試して頂きたい産地であると言えます。
ドイツ全域
この国における最も重要なブドウ品種であり、ドイツワインの代名詞とも言えます。
以前までは同国のワインは低アルコールの半甘口というスタイルが世間の一般的なイメージであり、辛口指向の現代では遅れを取った時代もありましたが、現在では生産量のほとんどが辛口であり気候変動もあってか非常に高品質なワインを生産しています。
ワインが生産されているほぼ全ての州でリースリングは栽培されていますが、最も栽培面積及び生産量が多いのはラインヘッセン、最高品質はラインガウ、モーゼルでは低アルコールの半辛口の心地よいスタイルなどなど、生産エリアによりさまざまな個性があります。
なお、同国は近年ピノ・ノワール種からの赤ワインが非常に品質が上がってきており、更に注目すべき産地であると言えるでしょう。
オーストリア全般
隣接するドイツと同じく、リースリングはオーストリアでも重要なブドウ品種です。
同国ではグリューナー・ヴェルトリーナーと呼ばれるこの国固有の品種が多く栽培されていますが、最高品質の辛口と評価されるのはリースリングから造られたワインとも言われています。
それらの多くは辛口でフルボディであり、凝縮された果実味があります。
特筆すべきはレス土壌と呼ばれる石灰を豊富に含んだ堆積土壌に植えられたリースリングです。鋼のような強靭なミネラルを持つ個性的な味わいとなります。
オーストラリア/イーデン・ヴァレー
南半球で最も魅力的なリースリングを生産しているのは南オーストラリア州に位置するイーデン・ヴァレーと呼ばれる地区です。同地区に隣接するバロッサ・ヴァレーはシラーズ種の聖地としても知られています。
ワインの酸化を防ぐために、低温で管理されたステンレススチールタンクで発酵を行い、比較的早い時期に瓶詰めされるのが一般的です。レモンのマーマレードのような凝縮された果実のフレーバーとライムのような爽やかな酸味が魅力的で、少し熟成させることでより一体感が生まれます。
この地区以外にも、クレ・アヴァレー、タスマニア島、グレート・サザン地区も同国内で優れた産地として知られています。
その他/東欧諸国
ドイツの東、オーストリアの北という位置関係なのでチェコ、スロバキアでもリースリングは成功しています。
特にスロバキア共和国ではドイツのエゴン・ミューラーというドイツ最高峰の醸造所が素晴らしいリースリングを生産しています。また、スロヴェニアやクロアチアでも栽培されており、メイン産地に勝るとも劣らない繊細で香り高いワインが造られています。
あまり市場で見かけることは少ないかもしれませんが、見つけたら是非トライして欲しい産地です。
まとめ

ピュアで弾けるような果実味と伸びやかで美しい酸味が特徴のリースリング。
柑橘を絞るようなイメージで料理に合わせるも良し、タイトな味わいの辛口は中東料理とも好相性ですし、半辛口は四川料理の唐辛子の刺激をカットオフするのにも効果的です。
ぜひ様々な国のリースリングを飲んでみて、お好みを見つけてみてはいかがでしょうか?
Sommelier’s Note
記事作成者
朝倉達也について

A.S.I.(国際ソムリエ協会) 認定ソムリエ / J.S.A.(日本ソムリエ協会) 認定ソムリエ・エクセレンス / Court of Master Sommeliers 認定ソムリエ / Napa Valley Wine Japan Expert / WSET Level 3 / 2022年、ソムリエの新しい働き方を広げてゆくべく独立、株式会社La Luneを設立。関西中心にフリーランスとして活動を開始。従来の概念にとらわれずもっと自由な料理とワインのペアリングをみなさまに楽しんで頂くために、独自のメソッドや方法論を日々試行錯誤している。