ワイン造り ~白ワインの造り方~
ワインの世界は非常に幅広く、一概にワインといっても白ワイン、赤ワイン、ロゼワインと様々な種類
があり最近ではオレンジ(アンバー)ワインも市場には定着しつつあります。
その他には酒精強化ワインやフレーヴァードワイン、はたまた黄色ワインや灰色ワイン、
藁ワインといったマニアックなジャンルもあるのが奥深いワインの世界。
この「ワイン造り」の回では様々なタイプのワイン造りのイロハを紹介していきます。
今回のテーマは「白ワインの造り方」です。
ワインに興味を持っていただいた方の多くの入り口は白ワインなのではないかなと思います。
理由としてはフレッシュさ、爽やかさ、飲みやすさ、人によっては甘口のものがお好きな方もいらっし
ゃるかもしれません。
ワインは嗜好品ですし、味わいに何を求めるかも人それぞれです。
では白ワインの魅力とは?赤ワインとの違いは?
そういった点を踏まえて白ワインの造り方を辿っていってみましょう。
*白ワイン醸造の基本
白ワインは一般的に白ブドウを原料とし、その果汁のみを発酵させます。
黒ブドウも皮は黒いのですが果肉は白いのでその果汁を絞ると白ワインができるのですがそれはあくま
でも例外、基本的には白ブドウの果汁を用います。
畑からワイナリーにブドウが届くと選果と呼ばれるベルトコンベア上で未熟な粒や病気にかかっている
粒などを取り除く作業が行われます。
その後除梗と呼ばれる果梗を取り除く作業をしたのち破砕といって軽くブドウの皮に傷を付け、ジュー
スを絞りやすい状態にします。
そして圧搾(プレス)を行い、慎重にブドウジュースを抽出します。
ブドウの重みだけで潰れて流れるジュースをフリーランジュースと呼び、圧力をかけて得たジュースは
プレスジュースと呼びます。
搾ったジュースは様々な成分が混ざり濁っているため、発酵が始まらないような低温化で放置し、上澄
みと濁りを分けたのち、発酵を開始させます。
発酵終了後、ワインは樽やタンクで貯蔵され、必要に応じて清澄、濾過、瓶詰の工程へ進みます。
これがおおまかな白ワイン醸造の流れなのですが、ポイントとして覚えて頂く点は
*基本的にプレスした後の果汁(ジュース)のみを発酵させる
という点だと言えます。
ジュースのみを原料としているので味わいはフレッシュさ、爽やかさが中心となり
香りはブドウ由来もしくは醸造由来の傾向にあります。
色合いについては醸造方法でいくらでも操作できる部分があるので
あくまで淡いか濃いかで若いのか、そうでないのかを判断する程度で充分でしょう。
①特別な醸造テクニック
ワインを醸造する中でワインメーカーは様々な醸造テクニックをワイン毎に選択します。
リーズナブルなワインなのか、プレミアムレンジのワインなのかで醸造法、熟成方法などが異なってく
るからです。
それでは代表的な醸造テクニックを一緒に見ていきましょう!
②スキン・コンタクト
白ブドウを破砕したあと、プレスまでの間に一定期間に果皮を果汁に付け込む方法。
品種由来の香りを移したり、タンニンを抽出したりすることでワインに複雑味が加わります。
果皮を漬け込む時間が長いとワインは色が濃くなり、渋味も増えます。
これはいわゆるオレンジワインの醸造方法なのですがワインメーカーは抽出のタイミングを見極める事
が大事だと言えます。
③シュール・リー
主にロワール地方のミュスカデという品種で採用されているテクニックです。
アルコール発酵後に、酵母の死骸である澱(オリ)をワインから取り除かず、翌年の春まで共に寝かせるこ
とで澱に由来するアミノ酸などの旨味成分をワインに移す方法。
ニュートラルな味わいの白ワインには効果的で、ロワールのミュスカデや我が国を代表する甲州でも一
般的に取り入れられているテクニックです。
アミノ酸に由来するメロンのような吟醸香がワインに加わり、味わいに奥行きが生まれます。
④マロラクティック発酵
ほとんどの赤ワインと一部の白ワインで選択されるテクニックです。
ワインの中のリンゴ酸を乳酸と二酸化炭素に変換させ、酸味を減らす方法で
強い酸であるリンゴ酸をまろやかな乳酸へ変換させることでワインにまろやかさやクリーミーさを与え
ます。
ソーヴィニヨン・ブランやリースリングのような爽やかな酸味を特徴とするワインでは選択されること
は少なく、シャルドネのような品種ではワインのスタイルを特徴づけるために行われることが多い方法
です。
⑤樽発酵orタンク発酵
ワインは発酵及び貯蔵をする際に樽かタンクかを選択します。
昔は醸造する際は木製の樽が一般的だったのですが近年、特に白ワインに関しては
フレッシュな味わいが市場で求められているのと、温度管理や清掃管理の容易さという観点からステン
レスタンクでの発酵、貯蔵が一般的になってきました。
しなしながら木樽で発酵、貯蔵を行う事でワインは樽の成分と結びつくことでポリフェノール類を生成
し複雑味を帯びてゆくので、プレミアムレンジのワインや長期熟成を狙ったワインなどでは木樽での発
酵、貯蔵が採用されています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
簡単ではありますが基本的な白ワイン造りの流れを紹介させて頂きました。
ワインは基本的はあれこれ考えずに楽しむものだと個人的には思っていますが、
少しでも踏み込んで知ることで、飲む楽しさも倍増するのではないでしょうか?
このコラムを読んで頂くことで少しでもみなさまがワインに興味を持って頂き、
豊かなライフスタイルを送って頂ければ幸いです。
ワイン造り~スパークリングワインの造り方~編もありますので是非!
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
Sommelier’s Note
記事作成者
朝倉達也について
A.S.I.(国際ソムリエ協会) 認定ソムリエ / J.S.A.(日本ソムリエ協会) 認定ソムリエ・エクセレンス / Court of Master Sommeliers 認定ソムリエ / Napa Valley Wine Japan Expert / WSET Level 3 / 2022年、ソムリエの新しい働き方を広げてゆくべく独立、株式会社La Luneを設立。関西中心にフリーランスとして活動を開始。従来の概念にとらわれずもっと自由な料理とワインのペアリングをみなさまに楽しんで頂くために、独自のメソッドや方法論を日々試行錯誤している。