ワインの世界地図~イタリア後編~
ソムリエズ・ノート
フリーランスのソムリエ朝倉達也です。
「ワインの世界地図」のコーナーは世界の様々なワイン産地を
歴史や風土、文化を交えながら紹介してゆくコーナーです。
今回のワインの世界地図のテーマはイタリア後編です!
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スタイルとエリア区分
イタリア南部
我々日本人がイメージするイタリア料理はほぼ南イタリアの料理かもしれません。
その理由は「トマト」です。
北部イタリアではバターなどを油脂として使う傾向にあるのですが、中部からはオリーブが栽培できる環境になるためオリーブオイルが多様され、南イタリアでは日射量も豊富なことからトマトの栽培が盛んになります。その為イタリア料理=トマトとオリーブオイルの図式が出来上がるのです。南イタリアは6つの州に区分され、そのうち2つは巨大な島です。典型的な地中海製気候で温暖でありながら火山の影響を受け様々な土壌が存在し、それがワインのスタイルにユニークさを与えています。
それでは、それぞれの州の特徴を簡単におさらいしていきましょう!
カンパーニア州
南イタリアでも最も有名な観光地を有するのがカンパーニア州です。
州都ナポリは勿論のこと、アマルフィやカプリ島、青の洞窟などもあり一度は訪れたい場所なのではないでしょうか?
カンパーニア州はギリシャの植民地として古代から栄え、ワイン造りの歴史も古く様々な古代品種が今なお栽培されています。
赤ワインと白ワインはほぼ半々の比率で造られており白ブドウ品種ではグレーコ、フィアーノ、ファランギーナなどが代表的で黒ブドウではアリアニコが最も重要視されています。
沿岸部では地中海性気候の影響で爽やかでミネラル感あふれる味わいのワインが、
内陸部に向かうにつれ日格差の影響でブドウの熟度が上がることから凝縮感のある味わいのワインが産まれます。
ピッツァ・マルゲリータ、ペペロンチーノ、ボンゴレなど日本人にも馴染みがある料理は
このカンパーニア州の郷土料理です。
プーリア州
イタリアを長靴で例えるならかかとの位置にあたるのがプーリア州です。
カンパーニア州と同じくギリシャの植民地として栄え、今でも多くの古代品種が栽培されています。
他の州と比べると平野部も多いのが特徴でブドウ以外にもオリーブや穀物、野菜の栽培も多く
ワイン生産量も国内では常に上位に位置する南イタリアを代表する産地だと言えます。
代表する白ブドウはボンビーノ、ヴェルデーカ、黒ブドウはプリミティーヴォ、ネグロアマーロ、ネーロディトロイアなどが挙げられます。
プリミティーヴォはアメリカのジンファンデルと同じ品種とされており、非常に凝縮した果実味と高アルコールのバランスが取れた柔らかな味わいのワインになります。
バジリカータ州
バジリカータ州は4つの州に囲まれていますが山に囲まれているため非常に交通の便が悪いとされていますがそのおかげで独特の文化を形成してきた州と言えます。
山岳地帯と丘陵地帯で9割以上を占めるため、栽培可能な面積が少ない為ワイン生産量も少ない。
ギリシャの植民地時代に黒ブドウであるアリアニコ種が持ち込まれ、今でもこの州で最も偉大なワインと呼ばれている銘柄「アリアニコ・デル・ヴルトゥレ」を生産しています。
そういった背景から生産の8割が赤ワインで、白ブドウではマルヴァジア・ビアンカ・ディ・バジリカータと呼ばれるこの州だけで栽培されるアロマ豊かな品種が代表的です。
山岳地帯であるため、郷土料理もサラミや腸詰など保存食が多いのも特徴といえます。
カラブリア州
カラブリア州はイタリア半島最南端に位置しています。
他の州と同様にギリシャの支配後、ローマ帝国、ナポリ王国の支配後イタリア王国の一部となりました。
2000年以上支配され続けられたため、州内5つの県では全て異なる文化、方言を持つ複合的な文化のある州です。
3つの大きな山脈とアドリア海とティレニア海の2つの海の影響により地中海性気候と大陸性気候が入り混じったような気候分布となっています。
カラブリア州も古代品種が多く、白ブドウではグレーコ・ビアンコ、モントニコ、黒ブドウではガリオッポ、グレーコ・ネーロ、マリオッコなどが重要な品種とされています
シチリア州
ゴッドファーザーの舞台になったシチリアは地中海に浮かぶイタリア最大の州です。
アフリカに近いという事もあり、古代から様々な民族、国々に支配された背景を持ちます。
地中海気候で温暖、丘陵地と平野部も多いことから農業が盛んで、特に小麦とオレンジ、トマトやピスタチオはとても有名です。
島の東部には活火山であるエトナ火山があり、この周辺では火山性土壌由来の個性豊かなワインが造られます。
意外にも生産は白ワインが7割近くを占め、白ブドウはカタラット、インツォリア、ジビッポ、カリカンテなどからフラワリーでアロマ豊かなワインが、黒ブドウはネロ・ダーヴォラからは力強いワインが、ネレッロ・マスカレーゼ、フラッパートからは軽やかなワインが造られます。
島の西ではマルサラと呼ばれるシェリーやポートと並ぶ名声を誇る伝統的な酒精強化ワインが造られています。
サルディーニャ州
サルディーニャも同じく地中海に浮かぶ島で国内では3番目の面積を誇ります。
すぐ近くにコルシカ島もあり、高級バカンス地としても知られています。
シチリアと同じく様々な人種や国からの支配を受けたのち、18世紀初頭にサヴォイアのもとサルディーニャ王国を形成しました。
島の内陸部は殆どが山岳、丘陵地であるのでワイン産地は殆ど沿岸部に属します。
沿岸部は地中海性気候、内陸部は大陸性気候となり雨は少なくしばしば干ばつに見舞われます。
ワイン生産量はおおよそ半々で、白ブドウはヴェルメンティーノ、ナスコ、ヴェルヴナッチャ、
黒ブドウではカンノナウ、カリニャーノ、ジロ、モニカなどのブドウが代表的です。
個性的なワインとしてはヴェルナッチャ・ディ・オリスターノと呼ばれる産膜酵母と共に熟成を行う白ワインで、シェリーのような独特な風味を持ち、この島の特産品であるボッタルガと非常に素晴らしい相性を見せます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
3回に分けてお送りしたイタリアワイン、どの州も様々な個性がありそうですね。
一度に色々覚えるのは大変だと思いますので、まずは今飲んでるラベルの裏を見て
どこの州なのか、どのあたりなのか、ブドウは何か、を見てゆく作業を繰り返すといいかもしれません。
ご自身の好きな郷土料理がある州のワインから探してゆくのもいいかもしれませんね。
イタリアでは特に食中酒としてのワインが当たり前であったのでより食事とワインの
関係性は他のどの国よりも密接であると言えるかもしれません。
是非あなたのお気に入りのイタリアワインをカーヴドヴァンオンラインで見つけてみてくださいね!
ソムリエ
朝倉達也
Sommelier’s Note
記事作成者
朝倉達也について
A.S.I.(国際ソムリエ協会) 認定ソムリエ / J.S.A.(日本ソムリエ協会) 認定ソムリエ・エクセレンス / Court of Master Sommeliers 認定ソムリエ / Napa Valley Wine Japan Expert / WSET Level 3 / 2022年、ソムリエの新しい働き方を広げてゆくべく独立、株式会社La Luneを設立。関西中心にフリーランスとして活動を開始。従来の概念にとらわれずもっと自由な料理とワインのペアリングをみなさまに楽しんで頂くために、独自のメソッドや方法論を日々試行錯誤している。