ワインの世界地図~スペイン編~

ソムリエズ・ノート

フリーランスのソムリエ朝倉達也です。

「ワインの世界地図」のコーナーは世界の様々なワイン産地を

歴史や風土、文化を交えながら紹介してゆくコーナーです。

今回のワインの世界地図のテーマはスペイン!

フランス、イタリアと並ぶ世界のワインの生産量の巨大シェアを誇る国です。

フランスとほぼ同じ国土面積の中の17全ての自治州で個性豊かなワインが造られています。

では、この魅力ある産地の歴史や様々なトピックを一緒に見ていきましょう!


歴史

スペインは歴史的な背景として様々な国、民族からの侵略と支配の歴史を辿っており、

文化や原語においても幅広い多様性を持っています。

ブドウ栽培はフェニキア人から伝えられ、その後ローマ帝国の拡大によりワイン造りはどんどん盛んになってゆきました。

711年にはアフリカよりイスラム教徒であるムーア人がイベリア半島に侵略をし始めスペインは支配されてしまいます。イスラム教徒はアルコールを飲まないのですがその代わりに蒸留技術などが伝えられました。

もともとスペインは国民の7割近くがキリスト教徒であったため、征服直後からレコンキスタと呼ばれる国土回復運動の動きが活発化してゆき、1492年にはイスラム教徒の手から遂に国土を取り戻すことに成功したのです。

その後スペインは航海技術の発達と共に世界への進出をはじめました。

大航海時代として知られる時代の幕開けです。

アメリカ大陸の発見、イギリスとのシェリー取引などでスペインはどんどん勢いを増してゆきました。

1800年代後半、ヨーロッパ諸国ではフィロキセラの被害が広がり、フランスから多くの生産者がスペインに流れ着き、ここで新たな醸造栽培技術がスペインに伝わったのです。

フランスから少し遅れてスペインにもフィロキセラは到達したのですが、既に対処法が考案された後ということもあり他国ほど甚大な被害には至りませんでした。

1900年代、2度の世界大戦や恐慌の影響で一時期は落ち込んだスペインの経済でしたが1970年代に独裁政権から民主化への道を歩み始めたのをきっかけに少しずつ復興に向かい、欧州経済共同体への加入後は急速にワイン産業は革新化され、成長をしはじめたのです。



スタイル

国土面積50.5万㎢はフランスとほぼ同じ広さでありブドウ栽培面積は945,578haと世界1位、

ワイン生産量は3,590万hlで世界3位となっており、フランスとイタリア、スペインで全世界のワイン生産量の3割近い生産をしています。

ヨーロッパではスイスに次いで山岳が多く、平均標高は660mです。フランスのワイン産地でも最も標高が高いエリアでも600m以下なので、いかに標高が高いかが伺えます。

山岳が多い国らしく、土壌も様々で最も生産量の多いカスティーリャ・ラ・マンチャ州では赤い粘土質土壌、シェリーの産地であるアンダルシア地方では真っ白な石灰質土壌、プリオラート地区ではスレート土壌、カナリア諸島のランサローテ島には幻想的な火山性土壌を見る事でき、この多様性ある土壌から様々なワインが造られるのです。





6つのエリア区分

北部地方

同国で最も高級銘醸地として知られるリオハ地方、それに次ぐ名声のナバーラ州、イタリアとの関係の深いアラゴン州、美食で有名なバスク州などが北部地方の産地です。

フランス国境が近いということもあり、フィロキセラ渦中でフランスから生産者が流れ着いたのがこのエリアであり、国際品種とスペイン固有品種のブレンドが多いのが特徴です。


地中海地方

世界的に有名な瓶内二次発酵ワインであるカヴァが造られるカタルーニャ州、豊かな農業と観光資源を有するバレンシア州、イスラム文化の影響が色濃く残るムルシア州が地中海地方の産地です。

南部地方

リオハと同じく銘醸地として知られるカスティーリャ・イ・レオン州、首都のあるマドリッド州、同国最大の生産量を誇るカスティーリャ・ラ・マンチャ州、農業の盛んなエクストレマドゥーラ州があり、高標高からの凝縮感のあるワインを産出しています。

内陸部地方

リオハと同じく銘醸地として知られるカスティーリャ・イ・レオン州、首都のあるマドリッド州、同国最大の生産量を誇るカスティーリャ・ラ・マンチャ州、農業の盛んなエクストレマドゥーラ州があり、高標高からの凝縮感のあるワインを産出しています。


大西洋地方

ポルトガルに面するガリシア州は年間を通じて温暖で穏やかな気候です。沿岸部ならではの海のミネラルを顕著に感じられる同国随一の高級白ワイン産地として有名です。

諸島

バレアレス諸島とカナリア諸島では少量ながら高品質のワインが造られ近年注目を浴びています。特にカナリア諸島のランサローテ島に広がる独創的な風景の火山性土壌の畑からは唯一無二の個性を持ったワインが生産され、世界中からの注目を浴びています。


スペインを代表するワイン

リオハの赤ワイン

1991年に同国最初の独立した原産地呼称を獲得した由緒ある産地です。

フィロキセラ渦にてボルドーから多くの生産者がこの地に押し寄せ、ボルドー品種のブレンドやフレンチオークの使用などこの地域独自の高級ワインの醸造技術を確立してゆき、海外輸出などのビジネスにも成功し、スペインの他の産地に先駆ける存在となりました。

リオハワインは独自の熟成規定を制定しており、赤ワインに関しては最低2年、長いものは60ヵ月の最低熟成期間を経ており、抜栓後すぐに楽しめるものから長期熟成ポテンシャルを持つものなどタイプも様々です。

ドライフルーツやポプリ、タバコ、落ち葉や血液、熟成させたチーズの外皮のような様々な香りを持ち、若いうちは荒々しいタンニンが熟成を飲み頃を迎えてボディに溶け込んだ時は非常に魅力的なワインとなります。

ボルドー、カリフォルニア、イタリアのスーパータスカンやバローロなどと並ぶ世界的にも有名な高級赤ワインと言えるでしょう。

カヴァ

スペイン語で洞窟を意味する同国が世界に誇る瓶内二次発酵スパークリングワインです。

主にカタルーニャ州を中心に造られ、マカベオ、チャレッロ、パレリャーダという地元品種のブレンドによって造られますが近年ではシャルドネやピノノワールの使用も認められています。

比較的リーズナブルな価格で本格的な瓶内二次発酵のニュアンスを楽しめるので我が国でも非常に人気のあるジャンルとなっています。

最近では昔ながらの縛りから飛び出してカヴァの名前を捨て、より独自性を求めるコルピナットと呼ばれる新しい生産者の組合も業界では注目を浴びています。

シェリー

アンダルシア州で造られるシェリーは世界三大酒精強化ワインと呼ばれ、真っ白な石灰土壌で育ったブドウから造られたベースワインを複数年度ブレンドをし、アルコール添加を行い保存性を高めたワインを指します。

味わいは極辛口から極甘口まで多様性があり、沿岸部独特の強烈なミネラル感、独自の熟成方法によって生まれた紹興酒のような香りが特徴的です。

個人的にはとても素晴らしく好きなジャンルではあるのですが、我が国ではまだ認知度が浅いのでまた別のコラムにてその魅力を存分にお伝えしてゆけたらと思います。

いずれにせよ食事との高い相性を見せる魅力的なワインだと言えます。


まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は駆け足で大まかな歴史や産地、代表するワインを紹介させて頂きましたが非常に多様性のあるワイン産地なので今後少しずつ各産地の特徴をお伝えしてゆけたらと思います。

比較的チャレンジしやすい価格帯のものも多く、なおかつフードフレンドリーなスペインワインをまだ試したことがない方は是非お試し下さいませ!

最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

ソムリエ

朝倉達也



朝倉達也
朝倉達也
A.S.I.(国際ソムリエ協会) 認定ソムリエ / J.S.A.(日本ソムリエ協会) 認定ソムリエ・エクセレンス / Court of Master Sommeliers 認定ソムリエ / Napa Valley Wine Japan Expert / WSET Level 3 / 2022年、ソムリエの新しい働き方を広げてゆくべく独立、株式会社La Luneを設立。関西中心にフリーランスとして活動を開始。従来の概念にとらわれずもっと自由な料理とワインのペアリングをみなさまに楽しんで頂くために、独自のメソッドや方法論を日々試行錯誤している。

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