
ブドウ品種を知る ~カベルネ・ソーヴィニヨン~

ワインはブドウから造られた飲み物であり、主役は言わずもがな、ブドウです。
ブドウの事をより知って頂くことでよりワインに対しての愛着が持てることでしょう。
「ブドウ品種を知る」の回では世界で栽培されている様々なワイン用ブドウを
メジャーなものからマイナーなものまで色々紹介していこうと思います。
今回のブドウはカベルネ・ソーヴィニヨン。
言わずと知れた赤ワイン用の最高級品種として認知されているブドウ品種です。
世界で最も栽培されているブドウ品種の一つであり、環境適応能力の高さや
病害への耐性の強さも相まって、ワインを造っているエリアでは、ほぼこのブドウが 栽培されているといっても過言ではない位のポピュラーな品種です。
歴史
この品種は人気の割には歴史が浅く、17世紀にフランス南西地方にて
カベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランが自然交配して生まれたとされています。
厚い果皮が特徴で、出来上がるワインは非常に濃く深い色合いとなります。
暖かな地域では完全にブドウが熟すことが可能なのでブレンドせずに単一でワインとなる場合が多いのですが、冷涼な地域やボルドーのような伝統的な産地では
味わいのバランスを取る為に他の品種とブレンドされることが多いです。
味わいはフルボディで厚い果皮から由来するタンニン(渋味)を豊富に含みますが
晩熟のブドウ品種であるため、長い成熟期間の恩恵を受けることが可能になるので
比例して高い酸味を持ち、豊富なタンニンとボディとのバランスを保っています。
一般的にはカシスのような黒系ベリーの香りを持ち、パプリカや杉、ミントのような
清涼感を持ち、樽と相性が良い事からヴァニラなどの香りを持ち合わせます。
いっぽう、暖かい地域ではブラックプラムやプルーン、ジャムのような凝縮感と
黒オリーブやココナッツのような香りを持つ傾向となります。
代表的な産地
フランス・ボルドー地方
アメリカ・カリフォルニア州
オーストラリア・クナワラ地区
ニュージーランド・ホークスベイ地区
イタリア・トスカーナ州ボルゲリ地区
フランス・ボルドー地方
このブドウ品種のメッカとされるエリアであり、世界中のカベルネ・ソーヴィニヨンは
ボルドーの味わいのスタイルを目指しているといっても過言ではないでしょう。
カベルネ・ソーヴィニヨンを主体にメルロやカベルネ・フラン、プティ・ヴェルドといった品種をブレンドしワイナリーの味わいを表現しています。
典型的なカベルネ・ソーヴィニヨンの味わいのスタイルを学ぶにはボルドー以上のものは
ないでしょうし、ボルドーの赤ワインにはワインに含まれる全ての香りの要素が含まれています。
アメリカ・カリフォルニア州
もうひとつのこの品種の産地の代表格はアメリカ・カリフォルニア州。
1976年の「パリスの審判」と呼ばれるフランス人の専門家によるワインテイスティングの
イベントがこの産地の名声を上げるきっかけとなりました。
このイベントでは当時のフランスとカリフォルニアのトップワイナリーのワインを
ブラインド(目隠し)で行って評価するというイベントだったのですが結果的にカリフォルニアワインが上位を総なめしたことによりカリフォルニアワインの評価は鰻登りとなりました。
それ以降、カベルネ・ソーヴィニヨンの二大巨塔として認知されています。
ボルドーに比べるとよりジャムのような豊満な香りやココナッツの味わいがあり
より親しみやすい大柄な味わいで非常に魅力的なワインになります。
オーストラリア・クナワラ地区
オーストラリアではこの品種は非常に熟するスタイルで、現地のアイコン的な品種であるシラーズ種とブレンドされる場合も多いです。
プルーンのコンフィチュールに加えベーキングスパイスやユーカリのような清涼感を
伴ったフルボディのワインを産出します。
ニュージーランド・ホークスベイ地区
近年最も注目されている産地で、南半球でありながらボルドースタイルのワインを生産します。 土壌もフランスに近いという事から、今後伸びしろのある産地となるでしょう。
イタリア・トスカーナ州ボルゲリ地区
イタリアでは1970年代に「スーパータスカン」と呼ばれるトスカーナ地区の地酒を
国際的な品質に昇華させたいという風潮が起こりました。
それまでのイタリアの伝統的な品種にワールドワイドなブドウ品種を加えることで
イタリアのテーブルワインでありながら最高級の品質のワインを造ろうという流れの一環です。
その一連の流れでトスカーナ州のボルゲリ地区に植えられたカベルネ・ソーヴィニヨンを使ったいくつかのワイナリーが世界的評価を得たためこのブドウ品種のイタリアでの地位は築かれたのです。
まとめ

赤ワインにおける世界的なポジションを得ているカベルネ・ソーヴィニヨン。
まずはこの品種を味わうことでワインの世界が始まることでしょう。
Sommelier’s Note
記事作成者
朝倉達也について

A.S.I.(国際ソムリエ協会) 認定ソムリエ / J.S.A.(日本ソムリエ協会) 認定ソムリエ・エクセレンス / Court of Master Sommeliers 認定ソムリエ / Napa Valley Wine Japan Expert / WSET Level 3 / 2022年、ソムリエの新しい働き方を広げてゆくべく独立、株式会社La Luneを設立。関西中心にフリーランスとして活動を開始。従来の概念にとらわれずもっと自由な料理とワインのペアリングをみなさまに楽しんで頂くために、独自のメソッドや方法論を日々試行錯誤している。