世界の新酒
秋も深まり、紅葉もピークを迎えて冬の足音が聞こえてきましたね。
食材も冬の食材が少しずつ登場してきて、クリスマスや年末年始の予定も考える時期になってきました。
そして我が国のワイン業界では一大イベントのひとつ、ボジョレーヌーヴォーの季節となりました。
普段ワインを飲まれない方でも「もうこんな時期か、1本くらい買ってみようかな」くらいの
認知度のあるワインでもあります。
今回はボージョレーを始めとした新酒についてお話させて頂こうと思います。
そもそも新酒とは?
その年に収穫したブドウを使いもっとも早く発酵する醸造技術を用いて造ったお酒のことです。
品質云々というよりかは「今年も無事に収穫できて良かった」という意味合いを込めて
造るものなので、ある意味お祭り的なワインだと言えるでしょう。
我が国では1976年に初めてボジョレー・ヌーヴォーが輸入開始され、バブル期で一度ブームとなったがバブル崩壊と共に一時期衰退を辿りました。
その後1995年の田崎信也氏の世界最優秀ソムリエコンクール優勝、1997年の赤ワインブームも相まって再度脚光を浴び、日本人のワイン消費に一役買うようなイベントになりました。
日本でメジャーなのはボジョレー地区のヌーヴォーですが、実はフランス各地にもヌーヴォー(フランス語ではプリムール)がありますし、その他、ヨーロッパを中心に各国にも新酒は存在します。
実際にどのようなものがあるのか、代表的な新酒を簡単にご紹介いたします。
各国の新酒
イタリア
イタリアでは20州全てでワインが造られていますが全ての新酒を
「ヴィーノ・ノヴェッロ」と呼びます。
毎年10月30日が解禁日であり(以前までは11月6日)最も早く新酒を楽しむことができます。
日本でも馴染みのある新酒の一つです。
ドイツ
「ディア・ノイエ」と呼ばれる新酒があり、11月1日が解禁日です。
オーストリア
「ホイリゲ」と呼ばれる新酒があります。11月11日が解禁日であり季節的な飲み物でなく
年間を通じて提供されます。
「ホイリゲ」とは居酒屋の意味でもあり、日本でいう立ち飲みのように気軽に食事とワインが楽しまれる文化が根付いているようです。新酒ならではの爽やかさもありながら力強い辛口なのが特徴です。
日本
毎年11月3日を解禁日と定め、山梨県内で収穫、醸造された甲州とマスカット・ベーリーAの新酒のことを「山梨ヌーヴォー」としています。国内で新酒に解禁日を定めているのは山梨県のみです。
他にも各ワイナリーや地域で新酒が発売されています。焼酎や日本酒にも新酒がラインナップに加えられています。
まとめ~とにかく楽しもう~
新酒を飲むことはいわゆるブドウ農家の一年の栽培、収穫、醸造、瓶詰というサイクルのひとつの区切りという事もあり、収穫祭のようなものです。
ここでブドウの質が、ワインの味わいが・・・と、とやかく言うのではなく、
いわゆる忘年会的なイメージで「今年も色々あったけど楽しかったね」というような
雰囲気で気取らず楽しく飲んでもらえれば良いのではないでしょうか?
料理も難しいものではなく、買ってきたお惣菜とか気軽に楽しんで頂くだけで十分だと思います。
ワインを普段飲まない方でもワインを意識してもらえるのがこの新酒イベントのポイントです。
この機会にワインに興味を持っていただいて、新酒から深く魅力的なワインの世界に足を踏み入れて頂ける方が増えることを願うばかりです。
ぜひ皆様も気の置けない仲間と新酒を片手に乾杯しましょう!!
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
ソムリエ 朝倉達也
Sommelier’s Note
記事作成者
朝倉達也について
A.S.I.(国際ソムリエ協会) 認定ソムリエ / J.S.A.(日本ソムリエ協会) 認定ソムリエ・エクセレンス / Court of Master Sommeliers 認定ソムリエ / Napa Valley Wine Japan Expert / WSET Level 3 / 2022年、ソムリエの新しい働き方を広げてゆくべく独立、株式会社La Luneを設立。関西中心にフリーランスとして活動を開始。従来の概念にとらわれずもっと自由な料理とワインのペアリングをみなさまに楽しんで頂くために、独自のメソッドや方法論を日々試行錯誤している。