
ワインと料理 ~肉とワイン~

今でこそ街中には多くのワインバーが見かけられ、ワインが楽しまれていますが
ワインは古来より食事と共に楽しまれる「食中酒」として発展してきました。
そう、ワインと食事は切っても切り離せない関係なのです。
ペアリング
料理とワインとの相性のことを世間では昔は「マリアージュ」と呼ばれていたのですが
現在では「ペアリング」が一般的なように思います。
この「ペアリング」には絶対的な答えはないので表現者と食べ手の数だけ正解があるのですが成功例を共有できると楽しいですよね。
この「ワインと料理」の回では皆さまが料理とワインのペアリングの成功例を感じて頂けるように、私が身近に感じたペアリングの実例や、私が考えるペアリングのメソッドをシェアしてゆこうと思います。
~ペアリングメソッド・肉とワイン~
ワインをあまり知らないような方にも知られている組み合わせの定石のひとつとして
「肉には赤、魚には白」があります。
これはあながち間違ってはいませんし、無難だと思います。
ですがこれだけだと面白みがないので肉には赤、、を置いといて
もう少し違う見方をしていきましょう。
朝倉式ではおおまかにまずは3つの観点でカテゴライズをします。
①色分け
②シンプルか複雑か
③テロワールを合わせる
各カテゴリを説明してゆきます。
①色分け
分かりやすい分類としてまずは色でのアプローチをします。
肉の色とワインの色を合わせます。非常にシンプルですがとても効果的です。
鶏肉~白ワイン
豚肉、サシの多い黒毛和牛、バルバリー種のような色の淡い鴨肉~ロゼワイン
赤身の牛肉、鹿やハトなどのジビエ肉~赤ワイン
魚でも同じアプローチが可能です。魚とはいえ食べるのは魚の身(筋肉)なのですから。
真鯛、ヒラメ~白ワイン
赤身のマグロ、鰯、サバのような赤身~軽い赤ワイン
カジキマグロのような淡いマグロにはロゼワインも合います。
タコやカニなどは生食なら白、茹でたら軽い赤といった風に加熱することで
合わせるワインの色を変えることも可能です。
いかがでしょう?色分けはシンプルですがとても効果的なので是非試してみてください!
②シンプルか複雑か
これは調理法とワインの味わいが関係します。
単純な調理法~刺身、カルパッチョ、盛り付けただけ、茹でただけ、塩で焼いただけなど
比較的単純な工程で作られた皿には同じような構成のワインを合わせます。
代表的なのは白ワインですね、ブドウ果汁のみを発酵させたシンプルな工程です。
そしてその中でも樽を用いずにステンレスタンクのみで造られた更にシンプルなタイプの
白ワインを合わせると味わいのレイヤーが合いやすくなります。
例えば焼き鳥で例にすると
一般的な部位のシンプルな塩焼き~白ワイン(色とシンプル合わせ)
ズリやハツなどの内臓系の塩焼き~軽い赤(色とシンプル合わせ)
一般的な部位のタレ焼きや炭火焼き~ロゼや軽い赤(シンプルにひと手間加えて複雑へ)
他にも鰻で例えるなら
白焼きにして塩とワサビで食べる~シンプルなので白ワイン
蒸してタレを付けて蒲焼き~複雑な調理法なので赤ワイン
というような考え方になります。
考え方としてはサッと作ったものにはシンプルな味わいものを。
手間暇かけたものには複雑な工程を経たものを、といった感じです。
③テロワールを合わせる
これは味わいという点ではなく、その土地の風土と歴史とワインを合わせる、、というイメージです。
例えばフランス唯一の原産地保護に認定されているブレス鶏には同じ産地の
ボージョレーを。(ブルゴーニュではなく、ボージョレー)
オーブラックの牛肉にはアカディッシュの赤ワインを、というのが定番ですが
それだと神戸牛には兵庫のワインなのか?という極論になってしまいますので
そこはある程度マイルドに考えてみて、ざっくりとこの肉はどの国のどこで食べられているのかな??といった考え方に切り替えてみましょう。
たとえば仔羊はフランスでは重要な食材ですがオーストラリアやニュージーランドでも
よく食べられるのでこの国々のワインは良い相性をみせるでしょう。
豚肉はどうでしょう?
まずイスラム圏では食べないですね、逆に加工肉を食べる国では重要な食材ですのでドイツなどでは豚肉をよく食べます。なのでワインもそんなエリアから考えます。
ジビエはどうでしょうか?
鹿や猪などのジビエ肉は山や森で狩猟を行いますので鹿や猪の肉を
地中海沿岸部のような海の見えるエリアのワインを合わせるとやはり微妙で
ピエモンテのような山岳地帯のワインが非常に良い相性となります。
極論ですが日本で例えると石狩鍋を食べながら泡盛は合わせないよね、といった感じです。
まとめ

というような様々な角度から料理とワインを考えていくのですがメソッドを見て頂いたら分かるように大事なことは「いかに相手に納得(共感)してもらえる過程が構築できているか」に尽きると思います。
ご存じの通り、ワインは嗜好品です。人それぞれに感じ方が異なります。
大事なことはお互いにワインの味わいや性格の価値観を共有して、
それについて協議できるか、そして楽しめるか、という事だと思います。
それはワインだけでなく、映画や本、音楽においても同じだと言えるでしょう。
このコラムを通じて、皆さまと価値観の共有ができたら嬉しく思います。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。
Sommelier’s Note
記事作成者
朝倉達也について

A.S.I.(国際ソムリエ協会) 認定ソムリエ / J.S.A.(日本ソムリエ協会) 認定ソムリエ・エクセレンス / Court of Master Sommeliers 認定ソムリエ / Napa Valley Wine Japan Expert / WSET Level 3 / 2022年、ソムリエの新しい働き方を広げてゆくべく独立、株式会社La Luneを設立。関西中心にフリーランスとして活動を開始。従来の概念にとらわれずもっと自由な料理とワインのペアリングをみなさまに楽しんで頂くために、独自のメソッドや方法論を日々試行錯誤している。