ワインと料理 ~ペアリングの考え方~

「ワインと料理」の回では毎回様々なテーマの料理とワインについて

検証していきたいと思います。

とはいえ、同じ産地のワインであっても作り手やスタイルによって千差万別ですので

「この料理にこの地域のこの品種のワイン」という事は言い切れませんので

あくまでも「料理に対してこの銘柄のワインがどうか」という事を言及してゆこうと思います。


初回である今回は私のペアリングについての考え方をシェアしたいと思います。

ワインペアリング、今ではかなり一般的に浸透されているこのサービス形態は

それぞれの料理毎にふさわしいワインをグラスで提供するというスタイルとなります。

ペアリングのメリット・デメリット

ペアリングのメリットはそのレストランがしたい表現を最大限に感じられる事です。

ワインのみの場合もあれば日本酒や焼酎を交える場合もあり、

シェフとソムリエの世界観をしっかりと感じられることが可能です。

価格も設定されていることから、予算も立てやすいという点もあります。


デメリットとしてはその店のルールに自らが沿わなければいけないので

提供される量が少なかったり、シェフのワインへの嗜好により例えばイタリアンなら

イタリアワインのみというような縛りがあることもあります。


いずれにせよコースの飲料をお店側に一任するわけですので

お店側の責任は重く、ソムリエの技量も必要とされます。

それをこなすことのできるソムリエがいるかいないかの判断も重要ですし 店側としてペアリングを設定することはかなりの自負と責任を負うこととなります。


ペアリングの基本要素

ペアリングについては基本の要素があります。

*香り

*質感
*ph

*バックボーン

この4つの要素を複合的に組み合わせることでペアリングは成り立ちます。
それぞれの要素を紐解いてみましょう。

*香り

最も誰しもがアプローチしやすい要素です。

ハーブの香りのワインにはハーブを添えた料理を。スモーキーなワインには

炭焼きや薪焼きの料理を、といった具合です。

味覚的な部分は無視してますが、まずはここを意識していくべきでしょう。


*質感

ワインや料理が口内でどのような広がりになるかを判断します。

ペアリングという行為はワインと料理が口内で「どれだけ違和感がないか」を

埋め合わせるという行為なのでこの要素は非常に重要です。

例えばプロセッコのような軽い質感のスパークリングワインに

噛みしめるような赤身のアンガス牛は合いません。

軽い質感のものにはポップコーンやえびせんのような軽い質感のものを。

噛みしめるアンガス牛には色素が強く口内に長時間滞在するような赤ワインを選ぶべきです。

質感は調理法により変わってきますので、お肉であっても繊維に沿って切るか

逆らってきるかでも味わいは変わりますし、同じ牛肉でもイチボ、フィレ、シンタマ、ロースなどの部位によって質感は変わりますのでソムリエはその質感をイメージすべきなのです。



*ph

酸度を指します。全てのモノにはph(酸度)が存在し、ペアリングの目的は

「口内でのphのブレを近づけて違和感を無くす」という行為なのです。

ですので酸味の高いワインには酸味のある料理や、レモンを絞るなどの行為を行う事で

よりお互いが近づくようになることでしょう。


*バックボーン

これは素朴ながらもとても大事な考え方のひとつで、その食材や料理がどこで食べられているかを考察するアプローチです。

例えば淡水魚を用いた料理に合わせる場合は、海が近いワイン産地は合わせませんよね。

せめて川が流れてる産地や内陸で湖のある産地を探しましょう。

分かりやすく言えば、北海道で石狩鍋を食べながら泡盛は飲みませんよね?

そのような考え方でその食材が伝統的にどこで消費されてきたか、というのは食べ合わせを

考える際に非常に効果的です。

歴史や食文化の勉強にもなるのでお勧めです。


まとめ

本来食事とワインは古来より共に歩んできたものだったので

本心としてはそこまで細かく考える必要はないと思いますし、

それぞれが「楽しく飲んで食べてくれたら」という思いが最前列にあります。



ですがこのペアリングのメソッドを少しでも知って頂くことで

食べ合わせに対してのエヴィデンスを加えることもできますし、楽しさも倍増します。

今後はこの「料理とワイン」のパートを通して皆様により

食べて飲むことの幸せに対してのお手伝いができればと思っております。


朝倉達也
朝倉達也
A.S.I.(国際ソムリエ協会) 認定ソムリエ / J.S.A.(日本ソムリエ協会) 認定ソムリエ・エクセレンス / Court of Master Sommeliers 認定ソムリエ / Napa Valley Wine Japan Expert / WSET Level 3 / 2022年、ソムリエの新しい働き方を広げてゆくべく独立、株式会社La Luneを設立。関西中心にフリーランスとして活動を開始。従来の概念にとらわれずもっと自由な料理とワインのペアリングをみなさまに楽しんで頂くために、独自のメソッドや方法論を日々試行錯誤している。

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