ブシャール・ペール・エ・フィスとは


1995年、シャンパーニュの老舗アンリオ家のジョゼフ・アンリオ氏がオーナーになると、ワイン作りの全工程で徹底した品質改革が行われました。そのポリシーは

「ひとつひとつの畑の個性(テロワール)が忠実に反映されていること」
「魅惑的な果実味と洗練されたエレガントさをあわせもつ味わいであること」

■畑~素材命の姿勢~

・リュットレゾネ(減農薬)の採用。約30の畑に気象台を設置し、24時間体制で気象データを収集

地中の温度や湿度まで把握し、病害が発生しそうな区画を予測。最低限の処理をその畑に施すにとどめる

小型のプラスティックケースによる手収穫

・積極的な改植。多産系の苗木をヴィエイユヴィーニュといえども良質のクローンの若木に植替え

■設備投資

・コニャックのタランソー社と共同で専用の樽製造会社を設立。完全なオーダーメイドの樽を調達

・小型の最新型ステンレス発酵槽の購入により、収穫ぶどうを細かく区画ごとに、成熟度に応じた仕込みが可能に

・2005年、1400万ユーロ(約20億円)を投資した新醸造施設が始動。深さ12mまで掘り下げた 重力に逆らわない多層構造、丁寧な選果ができる広い選果スペース、畑の収量に合った多数の発酵槽(木またはステンレス)、年間を通じて温度変化が極めて少ない清潔な設備

・完全温度管理のロジスティクスセンターを設立

■ネゴシアン部門でも
・極力買い酒は行わず、栽培指導からおこなったぶどう果を買い取り、自ら醸造(白ワインは果汁で購入)

商品ラインナップ


歴史


はじまりは17世紀


三代目のアントワーヌ・フィリベールが、ルイ11世と12世が築いた15世紀の城「シャトー ド ボーヌ」を購入。
このシャトーは、ボーヌの旧市街を取り囲むぶ厚い城壁のすぐ内側にあり、現在、その地下には、広大な樽熟庫が広がり、理想的な温度・湿度のもとで、数百万本ものワインが熟成の眠りについている。

1731年
ブシャール・ペール・エ・フィス設立
ミッシェル ブシャールが織物商として創業
1775年ワイン業に参入(ヴォルネーカイユレ畑取得)
1789年
フランス革命で貴族や教会から没収となった優良な畑を購入
1810年
   

15世紀の要塞であるシャトー・ド・ボーヌを取得し、瓶熟庫として利用。
現在も19世紀のワイン約3000本が眠っている。(ストック約500万本)

インタビュー


ブシャール社インタビュー vol.1maker4

「畑や自然に対するリスペクト」。
ブシャール哲学のもとに築かれた、よいワインを安定的に造り出す仕組み

ブシャール ペール エ フィス
チーフワインメーカー フレデリック・ウェバー氏

農工学と醸造学の修士号を取得後、シャンパーニュでのインターンシップを経て農業とワイン醸造学の深い理解を身につけた。ローヌでの経験を経た後、2002年にブシャール社へ入社。前責任者フィリップ・プロ氏のもとで10年以上ワイン造りに携わり、2013年チーフワインメーカー(醸造責任者)に就任。これからのブシャールワインの担い手として一切妥協のないワイン造りに取り組んでいる。

造り手の個性が突出しているワインはブルゴーニュワインとは言えない


創業当時(1731年)から変わらないのは、「畑の特徴を大事にする」というワイン造りに対する哲学です。 造り手の個性が突出していたり、人の意図が感じられるワインはブシャール社の、いえ、ブルゴーニュのワインとは言えない、と私たちは思っています。

そのため、醸造家はまず畑について学びます。毎日畑に出て、土の感触を確かめながら、毎年の違う気象条件・自然と闘いながらの作業です。 その作業はとても興味深く、ワイン造りに欠かせない点です。そうした畑の記録が膨大なデータとなって引き継がれているのです。

観察とテイスティングを重ね、自問自答を繰り返す


ワインになるまでの間に何度もテイスティングを重ねるうち、発酵が進むにつれてぶどうジュースが全然違うものになっていく。畑の影響によってまったく違う個性を持ったものに変わっていく。その過程を楽しめるのが醸造家、ワインを造るものとしての醍醐味です。

こうした作業には経験と時間が必要です。ぶどうを見て、畑を見て、観察とテイスティングを重ねることで、この年はどういうワインになるのかということがだんだん把握できるようになります。ただし、自信過剰になってはいけません。自問自答を繰り返しながら、他のスタッフの意見も取り入れていく。それを怠ると、10年経っても20年経っても間違うことはあるだろうと思っています。


ブシャールのワイナリーに、スターは必要ない


ブシャール社には、特別なマイスターがいるわけではなく、全員がスペシャリスト。言い換えれば、スターはいません。畑と醸造の管理者5人が現場の意見を吸い上げ、その年に造られるワインの方向性を決めます。

収穫日の決定、瓶詰め作業、ブレンド・・・ すべては決定権のあるこの5人の合議制で行います。誰かひとりの意見が大きく影響したり、パーソナリティがワインに出ては困るからです。こうして方向性が決まったら、ワイナリー全員で共有し、よりよいワインを造るという想いを一本化させます。そうすることで個々人に責任感が生まれ、よい水平分業の仕組みができます。

そしてもうひとつ、醸造責任者である私が常に扉を閉ざさないこと。互いの信頼の上に成り立った合議制と水平分業はワイナリーの運営をスムースにするのです。良いワインをコンスタントに造り続けるためには、風通しのよい組織でいることが重要です。


#2. Must to drink ブシャール社の「飲むべき1本」

同じ土地でもここまで味が違う。
「ムルソー レ クル」で広がるブルゴーニュワインの楽しみ方

ブシャール ペール エ フィス
東アジア輸出担当 西山雅己氏

プロヴァンス大学で語学と醸造を学び、CFPPA(農務大臣認定、ワインのプロフェッショナル養成機関)の研修にて「ワイン及びスピリッツの販売責任者」資格を取得。ブシャール ペール エ フィスとウィリアムフェーブルの両社で畑・醸造の研修を経て2003年ブシャール醸造チームに採用。その後広報担当として日本人として初めて正規採用される。現在マーケティング及び東アジア輸出担当。

寒い気候が育てるピュアな味わい。ブシャールはブルゴーニュワインの入り口です


「ブルゴーニュのワインを知りたい」と思われる方には、まずブシャールのワインを飲まれることをお勧めします。畑の特徴がよく表れていて、寒い地方ならではの酸の効いたピュアな味わい。それらは「ブルゴーニュらしい」と言われるにふさわしいワインです。

競合するワイナリーの多くは海外向けに力を入れており7、8割を輸出していますが、ブシャールは創業以来フランスマーケットを重視しています。生産量の約半分はフランス国内で消費され、その割合はオーナーが変わっても、醸造責任者が変わっても、変わりません。ただし輸出マーケットに限って言えば、最近アメリカに代わって日本の販路が拡大されてきていますね。

「ムルソー」のイメージを覆す「ムルソー レ クル」


自社畑の中でも8.6ヘクタールと大きな面積を持つ「ムルソー レ クル」の畑は丘の上、非常に涼しいところに位置します。通常「ムルソー」のワインと言うと重心が低く、厚みのあるゆったりとした味わいで、これは粘土と石灰でできたブルゴーニュの土地でも粘土質の多い低地の畑の特性から来るものですが、「レ クル」は高地にあるので、粘土は流れて石灰が主成分となり、まったく逆の、花や果実の香りがさわやかに際立つフレッシュな味わいとなります。

ブルゴーニュワインを知っていただくという意味において非常にユニークなワインですし、ワイン通の方にとっては「ムルソー」のイメージを覆す興味深いワインと言えるでしょう。


繊細な味の分かる日本人に飲んでほしい、ブシャール社のワイン


「ムルソー レ クル」はフレッシュで、後に少しミネラル感が残る、チーズと相性の良いワインです。山羊のチーズや、独特の香りと旨みを持つ同じくブルゴーニュ産のエポワスチーズなどと合わせていただくのが良いでしょう。チーズには赤ワイン、と思われがちですが、フランスでは白ワインにチーズを合わせることも多いのです。チーズのオイリーな食感を塩気のあるミネラルがうまく断ち切って、リフレッシュしてくれます。貝類や白身魚を焼いて、サッとレモンを絞ったものなどにも合いますね。

日本の食文化は素材を重視した繊細な味わいが好まれますので、フレッシュでみずみずしいブシャール社のワインはもともと日本人の舌にとてもよく合っていると思います。


#3. Innovation and Challenge ブシャールワインの革新と挑戦

「飲む歓びは、生きる歓び」。
生命感あふれるブシャールワインの革新と挑戦


ひとつひとつに個性がありながら、 すべてにみずみずしい生命感を持った味わい


ブルゴーニュワインは、畑が違えば味も香りも違う、それが選ぶ方にとっての楽しみとなり、私たち造り手にとってはやりがいを感じる点です。ひとつの品種でこ れほどのバリエーションが楽しめるのはブルゴーニュならではです。

ただひとつ、ブシャール社のワインに共通して言えることは、「生命力のあるワイン」ということでしょうか。 「フレッシュな味わい」というのは、単に「若い」ということではありません。例えば、木になっているチェリーをもいでかじったとき、青果店で売られているものとは 違う驚きがありますよね。もぎたての「青さ」だけでは ないみずみずしい「生命感」。そうした感動を味わって いただけるワインなのです。(西山氏)

修業期間の学びが、チャレンジの芽を育てた


ワイン造りに携わって10年以上になりますが、その修業期 間にいろいろなことを学び、実験を重ねてきました。 個々の畑の特長を頭と身体に叩き込み、その上でより よいものを見つけるためにチャレンジを続けてきたのです。

「全梗発酵」は私が醸造の責任者になって新しく取り入れた手法です。ぶどうの粒と粒をつなぐ梗を残した まま発酵させるやり方ですが、こうすると発酵期間が 長く保てるので、定期的に何度も試飲し、ぶどうの成 長段階を細かくチェックできるというメリットがありま す。ワインにフィネス(精巧さ)を与えることができるの です。最終的なワインの品質を上げるために、全梗の ぶどうをスパイス代わりに用いるイメージです。(ウェバー氏)


「変わらない美味しさ」を提供し続けるために、
革新を続けなければならない


挑戦をしなければ新たな発見はありませんし、仕事に魅力は生まれません。これまでブシャールにはなかったやり方を慎重に取り入れ、常に革新を続けるのは、ブシャール社の伝統、歴史、ブランドを守るためでもあるのです。「変わらない美味しさ」を提供し続けるた には、常に革新を続けなければならない、ということです。(ウェバー氏)

飲む人が笑顔になることから、ブルゴーニュのワインは「歓びのワイン(ヴィン・ド・プレジール)」と呼ばれています。ブシャール社のワインは、まさに生きている歓びを詰め込んだワインなのです。その名前に恥じないよう、これからも日々畑からインスピレーションをもらい、ワインと向き合っていきます。(西山氏)

Profile:

ブシャール ペール エ フィス
チーフワインメーカー フレデリック・ウェバー氏

農工学と醸造学の修士号を取得後、シャンパーニュでのインターンシップを経て農業とワイン醸造学の深い理解を身につけた。ローヌでの経験を経た後、2002年にブシャール社へ入社。前責任者フィリップ・プロ氏のもとで10年以上ワイン造りに携わり、2013年チーフワインメーカー(醸造責任者)に就任。

Profile:

ブシャール ペール エ フィス
東アジア輸出担当 西山雅己氏

CFPPA(農務大臣認定、ワインのプロフェッショナル養成機関)の研修にて「ワイン及びスピリッツの販売責任者」資格取得。ブシャール ペール エ フィスとウィリアム フェーブル両社で畑・醸造の研修を経て2003年ブシャール醸造チームに採用後、日本人として初めて正規の広報担当。現在マーケティング及び東アジア輸出担当。

ブシャール・ペール・エ・フィス
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