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造り手にふれる

5月31日（火）、　飯田橋のスペインバル、エルピコデオストラにて、スペインからワイン醸造家２名を招いた、メーカーズディナーを実施致しました。
大西洋に面したスペイン白ワインの銘醸地リアスバイシャスのワイナリー「ビオンタ」より、醸造家のロジェール・フェルナンデス氏、地中海側バルセロナに近い赤の銘醸地プリオラートのワイナリー「コステルスデルプリオール」より、女性醸造家ジュディ・ロップ女史が来日。

海の幸と合わせるのに最適な白【海のワイン「ビオンタ」】と、岩山の急斜面で造られる力強い赤【山のワイン「コステルスデルプリオール」】を中心に、この日のためにシェフが試行錯誤した創作スパニッシュ料理とのマリアージュを楽しみました。
その一部始終をレポートいたします！

会場は、「ビオンタ」「コステルス」一色。シェフとサービススタッフも準備に余念がありません。
ディナー開始前、醸造家とお客様のご来店を待ちわびる期待と緊張感の交錯するひと時です。

スペインバルエルピコデオストラ

飯田橋西口、東口から徒歩5分。閑静な住宅街とオフィス街の「路地」にございます。港近くの旧市街地、老舗スペインバルをイメージした店内とお料理。
牡蠣をはじめ、新鮮な魚介と旬の野菜、厳選した素材をスペインならではの調理法でお楽しみ頂けます。
シェフ國岡が体感したスペインはバル発祥の港町「サンセバスチャン」を表現したく、小ぢんまりとしたアットホームな雰囲気のなか、シーフードと多彩なワインをご提案します。

アペリティフから最初の２品は、印象的な黒いボトルで世界を魅了し続けるスペインを代表するカヴァ「フレシネコルドンネグロ」と合わせました。コルドン・ネグロはブラックボトルがトレードマークの世界１５０ヶ国以上で販売されているブランドです。柑橘系の香りとキリッとした酸味の爽やかな口当たり。透明感のある華やかな風味で、キメ細やかな泡立ちが酵母由来のトースト香と共に絶え間なく立ち昇ります。どんな料理にも合う辛口のスパークリングワインの典型です。

いわゆる、生ハムメロンをマグロとメロンソースで再現したお料理。しっかりとした塩味と燻製香のあるマグロとフレッシュなメロンのガスパッチョのコントラストが新鮮な一品でした。シャンパン同様の瓶内二次醗酵に由来するコルドンネグロのトースト香とマグロの燻製香、フレッシュ＆フルーティな風味とメロンの甘味が相性が良く、食べ合わせにより、口の中で色々な味わいに変化する楽しいマリアージュを見せてくれました。

二品目は、マヨルカ島の郷土料理の一皿。越田商店という干物屋さんが、40年の漬け汁で味付けしたという香熟鯖とピスト（スペイン版ラタトゥイユ）を載せたパンタパス。　
クサヤのようなもの、という案内もありましたが、それほど臭みは無く、油ののった鯖の身とカリッと焼かれた皮の食感のコントラストが感じられ、こちらもコルドンネグロの意外な厚みのあるボディを引き出してくれて、後味は、爽やかな酸味が口の中をスッキリとさせてくれました。

ここで、今回の主役の1つ、「海のワイン」ビオンタの登場です。
大西洋に面したリアスバイシャスという産地でアルバリーニョという白ブドウから造られる、スペインを代表する魚介向きワインです。

醸造家：ロジェール・フェルナンデスさんが真剣に語ってくれましたが、雨の多いこの地域では、アルバリーニョ種は、日本の食用ブドウに見られるような棚栽培が主流との事で、地元でも新鮮な魚介類と飲まれている、という点でも日本に近しいワインという気がしました。

味わいは、熟したリンゴや白桃を思わせる香り。みずみずしくフレッシュな印象。すっきりとした辛口とキレのある酸が特長的。
合わせた料理は、生牡蠣、ホタテのカルパッチョ、魚介のソーセージ、と魚介づくしでしたが、海辺の産地らしいミネラルの塩っぽい味わいが魚介の味わいを抜群に引き立ててくれました。

福岡県糸島半島でとれた、濃厚な味わいの生のミルク牡蠣に、アオサを混ぜたコンソメのジュレを載せて、西洋わさびと生クリームをつなぎにした１品。
プリプリの食感の牡蠣は噛むとミネラル分と牡蠣の風味が口中に広がり、コンソメジュレの旨味がそれを包み込むような味わいで、そこにビオンタの海ワインたる味わいが加わると、海の旨味が渾然一体となり、最高のマリアージュをみせてくれました。　　

ビオンタに合わせた２品目は、ホタテのカルパッチョ。パクチーにナンプラーをアクセントにして、軽く炙ったホタテとホタテとの間には、グレープフルーツが入った、非常にオリエンタルな風味のお料理でした。こちらは、ホタテの甘味によりビオンタのフルーティさがフワッと引き立ち、余韻には、グレープフルーツとワインの酸が上手く重なり、お互いに引き立て合うようなマリアージュが楽しめました。

ビオンタに合わせた３品目は、このお店のスペシャリテ、自家製の魚介サルシッチャです。　海老、牡蠣、鯛等の魚介類をふんだんに使った贅沢な味わいの逸品で、オマール海老の濃厚なソースがアクセントとなり、ビオンタとの相性も抜群でした。ワインの温度が上がるにつれて、ビオンタのふくよかな味わいが現れて、フルーティで奥行きのある、違った側面も楽しめました。

赤は、今回のもう1つの主役、「山のワイン」コステルスデルプリオールの登場です。「プリオラートの段々畑」の名の通り、バルセロナ近郊の銘醸地プリオラートの岩山の急斜面に開かれたブドウ畑から造られる赤ワインです。

今回来日したのはモランダワイナリーの女性醸造家、ジュディ・ロップさん。なんとこのワイナリーはたった4人で運営しているとのこと。有機栽培した土着品種を使った、力強くも優しい味わいは、彼女の信念の表れかもしれません。
その味わいは折り紙付きで、つい先日も、ブラインドのテイスティングにて、スウェーデン国王の晩餐会用ワインに選ばれたそうです。
重厚でありながらも、洗練された風味を持った銘醸プリオラートの名に相応しいワインです。

コステルス　デル　プリオールに合わせた1品目は、フランス産のウズラです。クリーム煮したウズラに、ブルサンペッパーを効かせたソースを合わせたものです。ウズラ肉ならではの濃厚な肉の旨味と甘味のあるソースの相性は抜群で、コステルスが加わると、果実の凝縮感と、シルキーなタンニン分が、お料理を包み込み、イッキにゴージャスなマリアージュとなりました。

コステルス　デル　プリオールに合わせた2品目は、フランス産の合鴨です。軽くソテーした鴨に、牡蠣の燻製という珍しい組み合わせでした。鴨肉の味わい深い肉の旨味は、コステルスの力強さにも負けず対等にマッチしましたし、そこに燻製牡蠣を加えると、濃厚なソースをかけたようで、クリーミーさと燻製香により、よりリッチになり、ひとまわりもふたまわりも大きく味わいが広がり、非常に興味深いマリアージュとなりました。

最後は、バスク豚のチュレトンです。國岡シェフ自らが切り分けてサービスしてくださいました。お肉は非常に柔らかく、絶妙な火の通り、切れ目は鮮やかなピンク色。脂身の香ばしさと、赤身のもちもちとした食感とジューシーさは塊で調理したお肉でしか味わえない醍醐味です。

ワインはここで、本日最高峰の赤ワイン、モランダ2009が供されました。このワインは、 1998年のファーストヴィンテージが、イタリアのヴィニタリー2001で、ベガシシリアに次いでビッグゴールドメダルを受賞。世界ベストレストラン第1位に選ばれた、バルセロナの「エル・セジュール・デ・カン・ロカ」にオンリストされている。といったスペイン・プリオラートを代表する赤ワインです。非常に濃い色合いで、複雑な香り立ち、ぎっちりと詰まった緻密な果実味、凝縮感とエレガントさが共存する逸品です！

もちろんモランダは、バスク豚の旨味との相性は抜群で、噛むほどにあふれ出る肉汁と、凝縮された果実味が相俟って甘味を感じ、まるでワインのソースをかけているようでした。

最後に

この企画に際し、何度も試作を繰り返したという「エルピコデオストラ」の皆さまありがとうござました。本当に素敵なディナーでした。
特にフレンチで修行をしていたという國岡シェフのスペイン料理はどれも上品かつ独創的で、驚きの耐えないディナーでした。そして何より、醸造家のお二人がご自分のワインに寄り添うお料理がこの日本で楽しめた事に本当に喜ばれていた事が印象的でした。
今回ご紹介するワインは、どれも、普段の食卓でも、様々なシチュエーションで楽しめるものばかりでした。上記のマリアージュレポートを参考にしていただき、是非、ご自宅でもお楽しみいただければと思います。　　

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